「技能」とは就労ビザの1種であり、このビザを持っている外国人は、法務省の統計調査によれば約41,000人(2019年12月時点)居るそうです。
※法務省 在留外国人統計「国籍・地域別 在留資格(在留目的)別 在留外国人より
なお、2019年より創設された「特定技能ビザ」とは異なるビザです。混同しないようにご注意ください。
何をするためのビザ?
技能ビザは入管法によると「本邦の公私の機関との契約に基づいて行う産業上の特殊な分野に属する熟練した技能を要する業務に従事する活動」とあります。
「産業上の特殊な分野」で「熟練した技能を必要とする業務」を行うためのビザ だということです。
そうすると、以下の様な疑問が湧き出ると思います。
- 「産業上の特殊な分野」とは何か
- 「熟練した技能を要する業務」とは何か
これら疑問点について詳しく解説します。
①産業上の特殊な分野 とは何か
「外国に特有な産業分野」「我が国の水準よりも外国の技能レベルが高い産業分野」「日本において従事する技能者が少数しか存在しない産業分野」であり、
全部で9種類あります。
- 調理師(中国料理・タイ料理・パティシエ等)
- 建設技術者(バロック式、中国式などの建設手法などの技能者)
- 外国特有製品の製造・修理(ヨーロッパ特有のガラス製品やペルシアじゅうたんなど)
- 宝石・貴金属・毛皮加工
- 動物の調教
- 石油・地熱等掘削調査
- 航空機操縦士
- スポーツ指導者
- ワイン鑑定等
②熟練した技能を要する業務 とは何か
個人が自己の経験を積み重ねることで得た熟練した技能を必要とする業務を言います。
そのため、このビザの要件には「実務経験年数(時間数)」を設けていることが殆どです。
その他、報酬についても決められており、同じ業務を行う日本人と同等以上の報酬額 を与えることも要件です。
他の就労ビザと何が違うのか
「技能ビザ」がどのような活動を行うためのビザなのか、は何となく理解できたと思われます。
そうすると他の就労ビザと何が違うのか という疑問点が出てくると思います。
こちらは少し込み入った話ですので、技能ビザについてザっと理解したい方は読み飛ばしていただいても構いません。
ア)技術・人文知識・国際業務と技能の違い
技術・人文知識・国際業務は「学術上の素養等の条件を含めて理論を実際に応用して処理する能力」を必要とするのに対して、技能は「自己の経験を積み重ねることで得た能力」を必要とするため、そこに違いがあると思われます。
イ)特定技能1号と技能の違い
特定技能1号は「相当程度の知識もしくは経験を必要とする技能」を必要とするのに対して、技能は「熟練した技能」を必要とするため、求められる技能レベルに違いがあると思われます。
ウ)特定技能2号と技能の違い
特定技能2号は「特定産業分野に該当する会社等で、熟練した技能を要する仕事」に従事するための活動です。
細かい説明は割愛しますが、ビザの成立目的に違いがあります。
特定技能ビザは「人手不足解消」のために設けられたビザであり、技能ビザは「日本人では代替が難しい技能者を受け入れ、経済や産業の発展を図るため」に設けられたビザです。
そのため、特定技能では特定産業分野の人手が充足された場合には、その産業分野は無くなり、新たに不足が生じた場合にはその新しい分野ができる ということです。
踏み込んで見た場合、特定技能2号は熟練した技能を試験等で評価することに対して、技能ビザは実務経験にて評価する点や、
特定技能2号は転職時に変更申請を行って許可を得る必要がある というような実務面での違いがあります。
日本では様々な就労ビザが規定されていることから、外国人の活動内容に合った適切なビザ(在留資格)を得る必要があります。
仮に「産業上の特殊な分野に当たる職種」で「実務経験」を有していたとしても、必ずしも技能ビザが下りるとは限らないのが、ビザ申請の難点です。
行政書士法人なんば事務所では技能ビザを含め、就労ビザや身分系ビザなどの様々なビザ申請依頼を承っております。